札幌地方裁判所 昭和35年(ヨ)301号 決定 1960年10月03日
申請人 北海道炭礦汽船株式会社労働組合連合会
被申請人 北海道炭礦汽船株式会社
主文
被申請人会社は、申請人組合と信義に従い誠実に団体交渉を行わないで、被申請人会社空知鉱業所赤間礦の事業場閉鎖を行つてはならない。
被申請人会社は、右赤間礦事業場の現状を維持し、特に赤間礦坑内への電源切断、扇風機の操業停止、坑内諸施設および資材の坑外への搬出ならびに撤去等をしてはならない。
(注、無保証)
(裁判官 佐藤竹三郎 石井敬二郎 古川純一)
【参考資料】
仮処分申請書
申請の趣旨
被申請人会社は申請人組合と信義、誠実にもとずく団体交渉を行わないで被申請人会社空知礦業所赤間礦の事業場閉鎖を行なつてはならない。
被申請人会社は被申請人会社空知鉱業所赤間礦事業場閉鎖の手段として、赤間礦坑内への電源切断、扇風機の操業停止、坑内諸施設及び資材の坑外搬出撤去、その他閉山の準備行為をしてはならない。
申請人組合の委任する札幌地方裁判所所属執行吏は、前二項の趣旨を公示しかつ右趣旨を実施するため適当な方法をとらなければならない。
申請費用は被申請人の負担とする。
との裁判を求める。
申請の理由
一、被申請人北海道炭礦汽船株式会社(以下単に会社という)は東京都に本店を有し、北海道内に空知礦業所など四礦業所を有し、石炭の採掘販売を業としている株式会社である。申請人北海道炭礦汽船株式会社労働組合(連合会以下単に組合という)は、会社経営の各礦業所所属の十三炭礦に勤務している鉱員で組織する労働組合で構成している労働組合であり、その傘下組合員数は約一八、五〇〇名である。
二、組合と会社との間には労働協約があり、これは現に有効に存続中である。【同協約は昭和二十五年十二月七日附で締結されたもので、その有効期間は締結の日から満一年である(一〇四条)が、その後毎年、一年毎に組合と会社との協定で延長され現在は昭和三四年九月三〇日附の協定書で昭和三五年九月三〇日まで有効期限が延長されている。そして昭和二五年十月一日以降延長については口頭の約束以外文書による確認した協定はないが、労働協約第一〇四条二項には双方から改訂の申入がないときは更に六カ月間有効とする旨の協定があるのに双方からその申入れはないので、昭和三六年三月三一日まで有効に存続している】
右労働協約第五条には「会社は事業場閉鎖、長期休業、操業短縮、分割、機構改正その他企業整備については労連又は組合と協議の上行う」と規定されている。
三、ところが会社は昭和三五年一〇月一日に組合傘下の赤間炭礦労働組合にたいして、赤間炭礦を閉鎖する。一〇月三日から坑内諸施設、資材を坑外に撤去撤収するための要員を入れる。これは九月二五日に重役会議ですでに決定されていることであると通告してきた。しかし右のような事業場閉鎖を行うには、前記労働協約第五条に従いあらかじめ組合と協議しなければならない。しかるに赤間炭礦の閉山は組合にしてみれば寝耳に水の申入れであり、この問題については労使間においてなんらの協議もなされていない。
四、組合は会社を相手に、赤間炭礦の閉山問題について会社が組合と協議しなければならない義務の存在確認を求める本案訴訟を提起するように準備中である。しかるに会社は、前項記載のとおり、協議の義務を尽くすことなく、重役会の決定だとして十月三日から坑内の諸施設、資材の坑外撤収などを行うように赤間炭礦労働組合に通告し、組合の反対にもかかわらず、閉山を一方的に強行する態度を明らかにした。組合は会社の違法な閉山強行によつて組合の蒙る差しせまつた回復すべからざる損害を避けるため、本仮処分命令を申請する。